『スティーブン・スピルバーグ氏死去』
新間の三面記事にある死亡欄の片隅に、そんな見出しを見つけた出雲悟は、愕然とした。なぜかといえば、そこには心不全が原因であることと、代表作は 『E.T.』と書かれているだけの、たった4行の記事だけだったがらだ。しかも、その欄の右上には、本人ではなく『E.T.』の顔写真が載っていた。
「ひどすぎる!ポール・マッカートニ-の時も頭にきたけど、今度は本当に失礼の度が過ぎる。失望したとしか言いようがないな、まったく。これじゃあまる で、彼には『E.T.』しかなかったみたいじやないか。『カラ-・パープル』だって忘れることはできないし、『インディ・ジョーンズ』で彼が開拓したスペ クタクル・エンタテイメントの世界を否定することは、誰にもできないはずだ。しかも間違った写真を載せるなんて!
知らない人が見たら彼を『E.T.』だと思うじゃないか」
悟はそう言って、いらだった気持ちをおさえきれずに新聞を床に叩きつけた。そして、ソファの後の壁に掛けてある額縁に納まった、マイケル・ジャクソン 『BAD』のジャケットに悲しそうに一瞥して、ため息を吐くと、防音壁にかこまれた仕事部屋に入っていった。しばらくの間、彼は発注された作曲の続きにと りかかろうと、マッキントッシュを作動させていたが気分がすぐれず、マウスを止めて机の上にあった「IN&OUT/エンタテイメント・トーキョー」をめく り始めた。いまや、発行部数150万部を突破した大人気を誇る情報誌の表紙は、いつもの通りブライアン・イーノのシリアスな横顔、特集には――これにも彼 は辟易したが――マイケル・ナイマンの7日間密着取材と独占インタビューだ。しかし、彼はページをめくっているうちに、映画情報のページの中で彼が唯一目 を通すことのできる「オフ・シアター・インフォメーション」のコーナーに、鳥肌が立つようなニュースを目にし、歓喜のあまり声を上げそうになった。中野武 蔵野館で、スピルバーグの監督特集が今日から始まるのだ。「さすが武蔵野館!やってくれるわ」
心の中の複雑な心情を武蔵野館へ行って慰めたい思いが慕り、また、それにもまして映画を観ることが生涯にわたって尊敬し続けた映画監督への供養だと思った彼は、できるだけ多くの人を誘って映画館にいくことにした。
しかし、何人かの親しい友人に電話をかけるうちに、のぼりつめた気持ちは鉛のように重たくなっていった。ほどんどの友人はまったく興味が無いといい、そ れ以外の友人は電話をした彼を軽蔑し、なじる言葉をならべて一方的に電話をきった。なかには、無駄な時間を費やした代償を月末に請求するという者もいた。 憤慨と失望で、立っていることもできなくなったので、彼は居間に戻りソファに横たわった。
彼は後悔した、そして後悔している自分が腹立たしかった。友人たちと、今の悟の気持ちをわかちあうことなど、はじめからできないからだ。彼らは悟のこと を、かたぶつの芸術至上主義者だとみきりをつけ、議論することすらさけた。なにかにつけてマイケル・ジャクソンや、スピルバーグを引き合いに出しては、啓 蒙的な論議をする彼は、けむたがられる存在だった。そんな友人たちに、動揺した気持ちがあったとはいえ、悟と同じ気持ちになれというのは無理があったの だ。
天井を見つめ思いをめぐらせていた彼は、いつものように自殺したいと思い、メロンパンをほうばった。
「うまいんだな、これが」
すると電話のベルが鳴った。知的で、艶のある澄んだ声の主は、彼の気持ちを汲んで一緒に食事をすることを条件に、快く武蔵野館へ同行するという。彼は武 蔵野館の前で6時に待ちあわせて、彼女の電話をていねいに切った。そして、『BAD』のジャケットにピース・サインを送った。
「わたし帰ります!」悟の説得もむなしく、レイコは席を立ち、足早に通路をぬけてロビーに出てしまった。
レイコの様子がおかしいのは、彼にもわかっていた。声にも象徴され知的で、清楚な色気を感じさせる端整な顔だち。彼より若干歳の若い、成熟した美しいこ の女性は、容姿も内面も完璧といっていいほど優れていたが、ひとつだけ妙な癖をもっていた。感情が昂ぶると小鼻がぴくぴくするのだ。
スピルバーグ特集の初日は『E.T.』だった。レイコの鼻は、タイトル・バックが写しだされるとすでに、緊張していた。それは時間が経つにつれて振幅を くりかえし、鼻息が荒らぶり、『E.T.』の指が少年の指にふれるシーンの直前で「ぶふぁ-っ!」と音をたてながら痙彎は頂点に達した。
「わたし、どうしてもがまんができないの。悟くんが、世界の終わりみたいだなんていったから、すこしでもはげますことが出来たらいいと思って、今日はここに来たの。でも、ごめんなさい。わたしもみんなと同じ、こういう映画にはむいていないんだわ」
悟は、体の芯から熱いものを感じたが、それをおさえて冷静にレイコを説得しようと努力した。しかし、彼女はもうロビーに去ってしまったのだ。レイコの跡を追って悟もロビーに出た。そこにはすでに、彼女の姿見つけることは出来なかった。
悟は映画館を飛び出して、レイコの姿をさがした。黒ずんだ木造の貧弱な映画館の前には、ギリシャ神話の神々の姿が彫りこまれた大理石の柱に支えられた、 東洋一の規模とうたわれるカラオケ道場「サン中野プラザ」のネオンが燦然と輝き、自慢のオーロラ・ヴィジョンには、ドイツ出身のヒット・メーカー、カール ハインツ・シュトックハウゼンの新譜のプロモーション・ヴィデオが大音量で流れていた。しきりと被写体をかえるアストロ・ヴィジョンの光の粒子は、湿った 空気にとめどなく落とされる塵と混じり合い、巨大なモアレをつくり出していた。音楽とともにまるで生きもののように形を変えるモアレは、悟にとって得体の 知れない怪物のように見えた。そう思うと、彼は急に嫌悪感をもようし、それは絶え間なく流れる音楽とあいまって、船酔いのように酷い状態になった。
もうろうとした意識のまま、彼の目には映画館にそって繁華街にのびる道の遥か彼方に、レイコが赤いコートを揺らしているのが見えたような気がしたが、そ れもオーロラ・ヴィジョンの強い明かりに吸い込まれていった。悟は茫然として亡骸のようになった肉体をひきずるように、繁華街をさまよった。しかし、そこ で見つけられたのは、パチンコ屋から流れるバルトークの旋律だけだった。
悟は歩き続けた。いま自分がどこにいて、どこにむかっているのかなんてどうでもよかった。ただ、無心に歩き続けることだけが、彼の気持ちの支えになって いることだけは確かだった。朝から厚い雲におおわれていた空は、次第に重くなりみぞれを降らせた。冷たい水滴は悟の顔を濡らし、悲しみにくれた表情を泣き 顔にかえた。悟はつられて号泣した。すると、鳴咽で肩を揺らす彼の脳裏に、『E.T.』の少年や、ハリソン・フォードの雄姿、ジョーズに果敢に挑んで死を 遂げるロバート・ショウの演じた船長が、走馬灯のように浮かび、彼をはげましてくれるではないか。その救済を一身に受けて、彼は愛の偉大さ、勇気と感動を あらためて実感し、これほどの逆境の中に至って、そんな感覚をおぼえることのできる自分の才能に喜びを感じた。そして、心から神に感謝した。みぞれは恵み の雨になり、涙は情熱の水晶と化した。
気を取り直した彼はしだいに強くなるみぞれの中で、ドリーム・カム・トゥルーの『晴れたらいいね』を、姿勢をただして口ずさみながら歩いているうちに、 この気持ちを人に打ち明けたいと思った。彼のアパートのそばに、こぎれいなロフト風のバーがあるのを思い出し、そこに足を向けることにした。
そこは、思ったより狭い入り口で、樫の木でできた扉には小さな文字でこう書かれていた。
〈ばあカタルシス〉
狭い板張りの通路をぬけフロアを見ると、10人ばかりの男女が静かにカウンターに並んでいた。悟がフロアに降りた瞬間、その男女たちは全員で振り返り、 彼に冷徹な視線をおくった。『晴れたらいいね』を口ずさんでいたからだ。悟は、すこし不良まがいの舌打ちをして、しかし、なにごともなかったようにカウン ターの席に腰を降ろした。店の中はあいかわらず、水をうったように静まりかえっていた。身動きできないほどの張り詰めた空気に、彼はいたたまれなくなっ て、ボーイに飲み物を注文するついでに話かけた。
「今日は、音楽はかけないんてすか?」
そういったとたんに、ボーイは形相を変え、まるで見下すような目で静かにいった。
「ジョン・ケージですよ。お客さん。知らないのぉ!」
悟は、朝から5時間以上もマッキントッシュにむかって、悩み続けていた。アンサリング・マシンには、機能が停止するほどの膨大なコメントが記録されていた が、彼は再生ポタンを押さなかった。作曲を催促する電話だと、彼にはわかっていたからだ。契約期間としては標準単位の10年間。その契約満了の日を目前に ひかえ、ノルマとされている最後の1曲が書けずに、すでに7週間も悩み続けている。解約日までに間に合わなければ、その後20年間にわたって支払われる年 金が、自動的に減っていくことを想像すると、なおさら気が気でなかった。年金の支払い期間が20年ということは、解約後ほぼ20年前後しか生きられないこ とを意味していた。それは、さだめられた期間にしか労働の権利を政府が認めていないからであり、急速なコンピュータの進歩とマルチ・メディアの普及によっ て、労働権をもてる期間は、もはや4力月単位で短くなっていた。雇用期間が終わると、年金だけで一生を過ごすことになる。法的には、ほんの一握りの選ばれ た者だけが契約期間の延長を認められた。しかし、誰もが将来に不安のかけらも持っていなかった。解約後の人生には、自由に費やす時間が、政府から与えられ ていたからだ。政府は知的レベルの快楽を奨励するとして、政府の与える情報のなかで、個人の悦楽を許し、その中で人々は幻想に酔っていた。悟は声高に、そ の制度を批判し弾劾したが、それに耳を貸す者はほとんどいなかった。音楽を中心とした運動体や、組合を組織しようと力をそそいだ時期もあったが、常に孤立 して失望をくりかえした。ひるがえって、弁護士をたてて契約の延長を試みようと思ったこともあったが、彼の思うところの芸術に理解を示し、一緒にその権利 を守ってくれるような弁護士は外国にも存在しなかった。
いらだったまま、6時間が過ぎようとした時、愛用している電動写譜ペンのインクが、きれているのに悟は気づいた。ペンは、メイル・オーダーの店『サービ ス&スカラ社』の製品だったが、メイル・オーダーでインクを取り寄せると3日かかるという。直接店にいけば、その場で買えるというので疲れてはいたが、悟 は出かけることにした。インクのメモリーを作曲の締切日にセットして買ったこともあって、直接に文句をいいたかった理由もあった。
『サービス&スカラ社』は、創業80年メイル・オーダーの老舗だ。しかし、老舗といっても権威のかけらもない。つまり、コンピュータ・ネットワークが張りめぐらされている時代に、メイル・オーダーなど無用の長物ということだった。
そこは、都心から少し離れた、同じ形をした建物が絶え間なく並ぶ団地街の中にある、団地のひとつの10階にあった。重そうな鉄の扉は、開放されたままで 扉の内側には『サービス&スカラ社』』の文字と、トレード・マークらしい、揉み手と拳が、プロンズの厚い板に彫り込まれていた。悟は入り口で声をかけてみ たが、返事はなかった。部屋の中に入り、もう一度大声で呼ぶと、家具調に作られた黒光りするカウンターの奥で、いきなり人が飛び起きた。
「失礼いたしました。いらっしゃいませ。何をお捜しでいらっしゃいますか?」
「電話をした出雲ですが」
「うけたまわっております。電動写譜ペン”手書き―極大タイプ―”のインクでございますね。少々お待ちください、先生」
貧相な顔だちに髭を伸ばした、痩せた小男の応対があまりにも丁重だったので、悟は文句を言えず待っていた。
「いやいやいや、お待たせいたしました。これですね。さすがにお目がたかい! このペンを使いこなせる作家の先生は、めったにいらっしゃいませんでございますよハイ。どうですか? 作曲のほうは進んでらっしゃいますか?」
あまりの矢継ぎ早の攻撃にうろたえて、悟は声がでなかった。
「なに、お困りでちゅかー?このこのーっ! 余裕かまさないでくださいよ。まいっちゃうなー先生。パーッとひとつ、ヒット飛ばしてくださいよ、いつもみたいに!」
「い、いつもって言っても‥‥‥。あなたに会うのは初めてですよ。失礼な。それに、インクが途中できれちゃったじゃない!このペンどうなってい‥‥‥」
「堅いことはいわないで、ほら、筆は人をえらぶって言うでしょ。あっ、違うか-っ!? がっはっはっ」
悟は明らかに動揺した。これほど軽薄な人間に出会ったのは、初めてなので自分がどう対処していいのかわからなくなってしまったのだ。
「でも先生、インクがこんなに早くきれたってことは、煮詰まってますかね? やっばり」
小男は、すこし意地悪そうな笑いをうかべて、静かにいった。
「わかりますよ。DNAは一度記憶したらもとに戻らないらしいんですよ。住みづらくなりましたからねえ、近頃は。私も、いっときは死にたくなるくらい気が滅入ったこともあります。お察しいたしますよ。そのお気持ち、大切にしてください」
まいった。本当に悟は、まいっていた。突然、体じゅうの血管や、脳が大きな波のように脈打ち、押さえきれないまま一気に隣の庭で鉈で断ち切られたような、衝撃をうけた。
小男は耳元でやさしくささやいた。
「実はね、ここだけの話ですけど、先生にぴったりな商品があるんですよ。きっと、先生の力になれるかと存じますハイ」
そういうと、おもむろに百科事典ほどもある厚さのカタログを、カウンタ-の上にのせ、ページをめくった。
「え-とWPM‐IR45ですか。私どもは、『ウイップマン』と呼んでおります」
男が開いたページには、体にぴったりしたブルーのスリーピースを着て、腰に手をあてがい、無表情ながらも、意志が強そうで精悍な顔つきの40を少しま わった男が、ポーズを決めて堂々と立っていた。手にはアタッシェ・ケースをさげている。悟の第一印象には、紳士服のページのように映ったが、どうやらそれ とは違うことは、定価の表示欄を見てわかった。見方によっては、怒っているようにも見える目。いずれにしても、相当な自信家に見えた。
宣伝用のコピーには、こう書かれている。”「小さい体でよく働く、うちの心の先生です」――スーツは商品に含まれません――”しかも、〈人気商品〉のシールが貼ってあった。
「なんなんですか、これ?」
「とりあえず、見てみてください。説明するより、早いと思います」
そういって男は、かしわでを打った。間髪いれずに奥の扉が、勢いよく開くと、カタログの男が全裸で飛び出してきた。なぜか黒のこぶりのアタッシェ・ケースを、左手からさげている。男はアタッシェ・ケースを床に置くと、こう言った。
「よお!」
ギリシア彫刻をおもわせる均整のとれた肉体美、無駄な肉がはぶかれ、隆起した筋肉と脈打つ血管は、雄々しい骨格に支えられ、逆三角形を形どっている。非の打ち所のないみごとな裸体は、薄い光をはなって仁王立ちしていた。
ウイッブマンは、悟にむかっていった。
「なにじろじろみてんだ。『雁が飛べば石亀も地団駄』わかるか? 雁を見て自分も飛ぼうと思った、身のほど知らずの亀のことを言うんだよ。石亀とはお前のことだ!」
「・・・・・・」
「だまってないでなにか言えよ! おい。ところで、おまえ『快感原則』って知ってるか? しけた面して。なにも言わないところを見ると知らないようだな。よおし! これから教えてやる、めしでも食いに行くか」
「‥‥‥はい」
なぜそう答えたのか、悟には説明がつかなかったが、返事をした自分に喜びに似たなにかを感じたのは自分でも驚きだった。
ウイップマンは、小男に鋭い視線をむけるとおもむろに近づいた。
「おまえの服をよこせ」
そう言ったとたんに、強引にしかも電光石火の勢いで、小男から服をはぎ取り身につけてしまった。そして、あっけに取られて見ていた悟の腕を、これまた強引に掴んでウイップマンは、彼を引きずるように、表に飛び出した。
全裸にされた小男は、青白い痩せた貧弱な体を震わせ、カウンターの下に落ちていた、ウイッブマンのマニュアルで股間を隠しながら手をふると、こう叫んだ。
「先生! 試用期間は一週間ですよっ! よろしくお願いしましゅ」
声は10階の扉から団地の森の谷間にこだまして、何度も跳ね返りながら暗闇の彼方に消えていった。
「俺はもう3日も寝てないんだ」
牛のマークのスキヤキ・レストラン『万世』で食事を終えて、店の外に出たウイップマンは、おもむろに悟にいった。
「それは疲れてるでしょう。もう帰りますか?」
「ここから近いのか」
「えつ?」
「近いのかって聞いているんだ。お前の家のことだよ」
「近いといえば近いですけど、まさか……やめてくださいよ。ただでさえ今日のことは、なにがなんだかよくわからないんですから。大体あなた強引ですよ。店員の服をはぐわ、食事代を人に払わせるわ。いいかげん、僕につきまとうのはやめてくださいよ」
「人生にはリスクがつきまとうものだ。そんなこともわからずに、お前はよく今日まで生きて来たな。教えてやろう、お前が生きた38年間は、無意味だ! もったいないっ」
といい切ったウイップマンは、「はっ!」と気を吐くと、拳を電柱に叩きつけ粉々に砕いてしまった。
「わけのわからないこと言って暴力ふるうのはやめてくださいよ。僕にだって生活があるんですよ。締切りまでに曲を書かないと、一生を棒にふるんだ。こんなことにつきあってる暇はないんです。僕はひとりで帰ります。あなたは、勝手にしてください」
ウイップマンは凄い力で悟の腕を掴んだ。
「まだわからないようだな。これを見てみろ、お前の人生とやらを計算してやる」
ウイッブマンは、左手のアタッシュ・ケースを開くと、見たことの無い形をした計算器型のキー・ボードを取り出し、瞬時に右手の五本の指をストロークして、なにかをインプットした。横長のディスプレイに、こんな表示が映し出された。
《イズモサトル、38才、ダンセイ、サッキョクカ》
「お前の人生をインプットした。こいつが、お前の今日まで生きて来た結果をはじきだすのだ。結果を知りたければ、エンターを押してスピーカーの声を間け」
悟は緊張しながらうなずいて、慎重にエンター・キイを押した。
「かあ。かあ」
もう一度、押した。
「かあ。かあ」
「なんだこれ、壊れてんじゃないの?」
ウイップマンは冷静な声で言った。
「それが、お前の人生だ」
悟は玄関の扉の鍵を回すと、男を部屋の中に入れた。彼を寝室に案内して居間に戻ると、煙草に火をつけて、ソファに横になった。壁に掛けたマイケル・ジャクソンの顔にむかって、今日おこった災難を一部始終報告していると、大声が突然、割り込んで来た。
「おいおいおい!どういうことだ、これは」
そう叫びながら、居間に突進して来たウイップマンは、マイケル・ジャクソンの額縁を動かした。
「やめろっ! それだけは、やめてください! 結局あなたも、みんなと同じなんですか? わざわざ、ここまで来て僕を苦しめるのはやめてくれ!」
悟は飛び起きて、ウイップマンの足にすがりついた。
「これ、ちょっと曲がってるぞ」
「・・・・・・」
「額縁は、床から水平にするものだ。それに、もうすこし上に掛けたほうが、部屋との調和かあってよろしい。ほら」
悟はいきなりはずされてしまったので、あいまいな返事をして座り込んだ。
「おい、悟。ポストウオーター飲むかぁ?」
「はあ」
「冷蔵庫は、ここか?」
「勝手に開けないてくださいよ」
ウイップマンは無視して、居間の壁に取納された冷蔵庫の扉をすばやく開けると、ボトルをわし掴みにして、らっぱ飲みした。
「よく冷えてるな-。スキヤキ食べたから、喉が乾いて、乾いて。あれ、なんだその顔は。あっ、そうか。すまんすまん、飲みたかったのね? 君も」
「違いますよ。ここは、あなたの家じゃないんだ。僕の部屋なんですよ。勝手に、僕のものをさわるなと言ってるんです」
悟は座り込んだまま主張した。
「じゃあ、拝見させていただこうかな?」
そう言うと、ウィップマンは仕事部屋に入ってしまった。
部屋の中は、様々な楽器やコンピュータ、ミキシング・コンソールが複雑な配線で、ケーブルに繋がれていて、マッキントッシュの置かれたテーブルの上は、アイディアが書かれたノートや書き損じたスコア、鉛筆が散乱して、作曲の煮詰まり具合をあらわしていた。
「楽器やコンピュータには、絶対に手を触れないでください。これだけは、約束してくださいね、本当に。あなたは、暴力やへんてこな電算機の専門家かもしれないけど、音楽は僕の領域なんですから。この部屋は、神聖な音楽の創造の場なんです!」
悟が真顔でくってかかるようにいい寄って来るのを、あっけにとられて見ていたウイップマンは、ピアノの前に置かれた椅子に座ると、ゆっくりと落ち着いた口調で話しはじめた。
「ところで、悟君。このような環境で創造というものが生まれて来るのでしょうか? まずテーブルの上を、かたずけなさい。創造の為に混沌に身を投じること があっても、常に混沌から距離をとらないと、創造することは出来ません。環境に身を置くとは、常に森の冷気の中にいることです。たけの低いかなめの木や、 山の輪郭をひずみにかけたようにかすませる高い喬木の、裸になった褐色の枝えだ、無数の胞子たちが落ちる音、涌き出でること止まない甘い泉。それが環境で す。でもここで、大切なことを忠告しましょう。それが始まりだということです。そこにいて、そこから飛び散る。静かにそれを感じなさい」
そういって、彼はピアノに向きを変えるとやさしく指を鍵盤にたたいた。始めはあてどなく手探りをしているように聞こえた音の繋がりは、次第にひとつひと つが独立していき、まるでピアノが息づかいを繰り返すように、それぞれが伸縮し、未知のリズムを生んでいった。音と音の空白に、新たな響きが浮かんでは消 え、ときには弧線を描き、ときには数珠玉のように繋がった。だれも聞いたことのない、青の世界。悟は、それを止めることなく、いつまでも聞き入っていた。 それが、ベートーベンの『月光』だったことに気づくこともなしに。
ウイップマンか目を覚ました頃、時計は朝11時をまわっていた。居間に出てみたが悟の姿か見当らないので、彼は仕事部屋の扉を開けた。
悟の表情からは、昨日までの悶々とした苦悩の表情は消え、穏やかだが厳しさをともなった顔がそこにあった。悟は、へッドフォンを付けてマッキントッシュ に向かっていたので、しばらく彼に気づかなかった。おかげで、扉のそばにあるキーボードに振り向きざまに触れようとした時、ウイップマンの鋼のような腹筋 に、手をぶつけて叫び声をあげることになった。
「やってるな-。よおし、俺は昼めしでも作るか」
突き指してうずくまる悟を尻目に、ウイップマンは居間に出ていた。
それからの毎日、ウイップマンはきのこ料埋を作った。悟はなぜ、いつもきのこ料理なのかと質間したことがあるが、「言葉で理解するな」と言われただけ だった。そして、なにかにとりつかれたように、悟は作曲を、ウィップマンは肉体の鍛練を続け、きのこを食べることを繰り返していた。
4日目の昼。食事を済ますと、ウィップマンは悟に語りかけた。
「悟は、何の為に創造するのだ?」
「わからないんですか? 3日3晩一緒にいて。しかも、僕は一睡もしていない。なぜこんなに自分に鞭を打って、僕か作曲するのか。それは、締切りや年金の 為でもなんでもない。芸術の為なんだよ! あなたはわかっているはずでしょう。いやわかってもらえるはずだ、あなたには!」
「鞭はまだ振りおろされていない。それに芸術とは『かあ、かあ』だ」
「また、わけわかんないこと言う。僕にはやっぱり、あなたのこと理解できませんよ」
「ところで悟、ここに君をふくめて3人の人間がいました。そして5万円が目の前にあるとします。さて、どうしますか?」
「心埋テストですか?」
「深く考えないことです。さあ、どうしますか?」
「そうですね。僕だったら、みんなでじゃんけんして、勝ったひとがもらうことにします。民主的にみんなが公平な立場で、勝負をしてジャッジメントがくだされる。これなら文句ないと思います」
「自分の為に1万円をとり、他の2人に2万円を分けることもできるはずですか、どう思いますか?」
「そ、それは-」
「君はガンジーを知っていますか?ガイジンじゃないぞ。ガンジーだ。彼はこう語っています『すべての真の芸術とは、その内面的なもの自身を実現する為、魂を助けるものでなければならない』 わかるか?」
「それと5万円と何の開係かあるんですか?」
「問う前に、受け入れることも時には必要です。ところで、天気もよいことだし、ひさしぶりに表に出るか」
ウイッブマンは、アタッシュ・ケースを左手に持つと、玄関の扉を勢いよく開けた。
ウイッブマンがどこへ行こうとしているのか、悟には見当がつかなかったが、3日ぶりの街はすがすかしく感じられた。ウイッブマンにつられて、いつもより 早い歩調で街を闊歩していたからかもしれないが、彼は今日までの自分にはなかった、新鮮な感覚を体におぼえた。まわりが、変化したのか、それとも自分の中 で何かが変わりつつあるのか、悟にもわからなかったが、気持ちの歯車が違う速さで回っているような気がした。
街はいつもと変わらず、しかし、パチンコ屋から流れるバルトークもさほど気にならなかった。巨大なオーロラ・ヴィジョンに、映し出されたブライアン・ イーノの顔を見た時はすこしうんざりしたが、嫌悪感を感じるようなことはなかった。それよりも、街の人どおりが思ったより激しいのに気づき、悟は驚いた。 今まで、閉ざすことで自分を守って来た悟は、街を眺める余裕もなく過ごして来たのだ。悟にとって、いま目に映っている風景は昨日とはまったく違う街なの だ。街の中で増殖する人たちは、それぞれがまったく同じ目的をもって、まったくちがう方向に歩いていた。幽愁をたたえてそびえたつ有機質な建物の森と、そ れらにしだのように絡みつくひといきれとあいまって、入り組んだ織物の模様が、織られるたびに変わっていくように影を残しては、消えていった。悟にはそれ が、すこし隣れにも感じた。そして、自分のことを考えていた。
2人は、歩き続け北から南に繁がる長いトンネルに入っていった。むせかえるような人の波に、もまれながら南口に抜けると商店街のバラックに入った。八百 屋の前を通りかかったとき、ひとの良さそうな八百屋の店主とおぼしき年配の男が、ブライアン・イーノのヒット曲を口笛で調子よく吹いていた。
「ヘい! 毎度ありっ。お釣はイーノってか?」
主婦に愛想をふりまく八百屋を見て、悟は嘲笑した。その瞬間、
「おろかものっ!」
ウイッブマンは叫ぶやいなや、悟に鋼鉄の平手打ちを連発すると地面に叩きつけた。悟の視界は氷つき、写真のように、通りかかった人々や八百屋の動きが凍 結した。そこには、物理的な感情しか見いだせなかった。1万分の1秒ほどの瞬間だったろうか、悟にほそれが永遠に感じられる出来事だった。
しばらくすると、ウイップマンの顔は憤怒の形相からみるみるうちにモーフィングされ、いつもの顔に戻って、にっこり笑った。
「ドンマイ。ドンマイ」
息つく間もなく悟が動揺していると、ウイッブマンは何かに引き寄せられたように、彼方を向いていった。
「おい悟。あれが聞こえるか?」
ウイップマンは、自分の感覚のボルテージを最大限にあげているかのように、驚異的な速さで振動し始めた。ウイッブマンの振幅の激しさは、その輪郭がほっきり見ることの出来ないほどだった。
すると、人の波をかきわけるようにして、あるいは人にぶつかりながら、レイコが自転車に乗ってベルを鳴らしながら、2人のほうに向かって来るのに、悟は気づいた。
「悟。あの音だ。あの音を捕まえるんだ。聞こえるだろう」
ウイッブマンは、悟を起こすと今度は自分がうずくまり、哀願するようにいった。悟の耳元にブーンというウイップマンの振動音がまとわりついた。
「早くしないか! 悟」
「音って……ベルの音」
悟が気づいた時には、ウイップマンはレイコに、いやベルに向かって猛烈なスピードで飛び出していった。悟があっけにとられた瞬間、突然車が道路を横切って、ウイップマンの脇腹にボディを突き刺した。軋んだ音を立てて急停車した車に、悟は駆け寄った。
ウイッブマンは、うつぶせになった体をゆっくりと両腕で起こしながら悟を見た。割れた額からは、心臓の鼓動にあわせて血が溢れだしていた。悟は、そこに かかみ込むと、どうしたらいいのかわからずに、したたり落ちるウイップマンの額の血を両手ですくった。血は悟の指の隙間から地面にこぼれ落ち、赤い水銀の ように飛び散って逃げていった。
「悟。個人の死には、他人は入れない。これが人類最後に残された現実なのだ。あっ、でも生まれる時もあるか‥‥」
これがウイップマンの、最期の言葉だった。
ウイップマンの横には、黒いアタッシェ・ケースが口を開き、そこから壊れた電算機が放り出されていた。歪んだ電算機の中には四角い電池がふたつ人っているだけで、なにもなかった。
これは頭の中だけで理解したことではない。これは違うぞ、という非常に深い本能的なおもいが、腹の底から突然こみ上げてきたのだ。地球という青白い惑星 がかなたに浮かぶのを目にし、それが太陽を回っていると考えたとき、知識として理解するのではなく、字宙の流れやエネルギーや時間や空間には目的があるこ とを肌で感じたとき。そのとき不意に、それまでの経験や理性を超越した直感による理解が存在することに思い至った。この字宙には、行きあたりばったりで秩 序も目的もない分子集団の運動だけでは説明のつかない、なにかがあるように思われる。
エドガー・ミッチェル
「地球/母なる星」監修・竹内均/小学館刊より
玄関のベルが鳴ったので、悟は扉を開けた。
「『サービス&スカラ社』でございます。試用期間はご満足いただけましたですか、先生? あらっ、びっくりした顔しちゃって。この、このーっ!そんなあなたに、今日は契約書をお持ちした次第でございまちゅよー」
「はあ」
「はあ、だなんて。忘れないでくださいよ。これですよ、これ」
そう言って、小男は扉の外にいる男を指差した。
「よお!」
Yasuaki Shimizu / translated by Alfred Birnbaum
1
Steven Spielberg Dead—the headline tucked away in a page-three obituary column just about dumbfounded Satoru Izumo. It was too disheartening: to think the director merited a mere four lines, which only mentioned E.T. as his major work at that. And to make matters worse, in the upper right corner above the article, instead of a photo of the man himself was a picture of E.T.
“The sheer outrage! I thought it was bad that time for Paul McCartney, but this truly goes beyond common decency. Depressing or what, I swear! This makes it seem like he never did anything but E.T., doesn’t it? But what about The Color Purple? And who can ignore his ground-breaking cycle of Indiana Jones adventure spectacles? And then to go and print the wrong photo! If you didn’t know better you’d think it was E.T. they were talking about.”
Unable to contain his anger, Satoru flung the paper to the floor with a bang. Then shooting a sad glance at the framed album jacket of Michael Jackson’s Bad that hung on the wall behind the sofa, he heaved a sigh and trundled into his soundproofed study. After a few minutes of trying to get back into the song he’d been commissioned to write, he lost his mood for plugging away at the Macintosh. He halted his mouse and started leafing through an issue of IN & OUT/Entertainment Tokyo on his desk. Now over 1.5 million copies in print! This mature-reader’s trend magazine showed an ever-serious Brian Eno in profile on the cover and featured a seven-day coverage and exclusive interview—this he balked at—with Michael Nyman. But in flipping the pages, his gaze locked on the “Alternative Cinema” listings, where he eyed tidings of gooseflesh-raising good news and let out an overjoyed yelp. Starting today in Nakano they were running a Spielberg Festival! “Leave it to the good ol’ Musashinokan.”
Okay, he’d go soothe these complicated feelings inside him at the Musashinokan, or better yet, he’d offer his last respects to the director he’d worshipped all his movie-going life by inviting along as many friends as possible to the cinema.
Though after calling up a few close friends his ballooning spirits began to weigh down like lead. Virtually no one had the slightest interest, and still other friends he phoned actually snubbed him, reeling out a string of insults and hanging up unilaterally. One of them even went so far as to say he’d bill him at the end of the month for compensation for wasting his time so pointlessly. Unable to take this rage and disappointment standing up, Satoru returned to the living room and sprawled out on the sofa.
He regretted having done what he did, then he got mad at himself for regretting. He should have known better all along than to expect his friends to share his innermost feelings. They all wrote Satoru off as a fossil of an aesthetist, and even avoided getting into discussions with him. Prone to hauling out the likes of Michael Jackson and Spielberg at the least excuse for enlightening debate, he made himself an irksome presence. Even granted that these friends of his might register some tremulos of emotion, it was ridiculous to expect them to feel the same way he did.
Staring up at the ceiling thinking, contemplating suicide as usual, Satoru wolfed a melon-creme roll. “Good stuff this.”
When just then the phone rang. The owner of that lilting voice suffused with intelligence and other charms happily agreed to accompany him to the Musashinokan, on the condition of a meal together where she would quaff of his sentiments. He arranged to meet in front of the Musashinokan at 6:00 and she gently hung up the phone. Then he flashed a peace sign at the Bad album jacket.
2
“I’m leaving!” said Reiko, standing to go. Heedless of Satoru attempts to assuage her, she scooted up the aisle out to the lobby.
He knew Reiko was acting strange. Call it a signal in her voice, in her tranquil face that bespoke such knowing yet virginal sensuality. Just a shade younger than he, hers was a mature beauty graced by a singular perfection in body and mind, only she had one small quirk. Whenever she got worked up over something, her pert little nose would twitch.
The opening day screening of the Spielberg Revival was E.T. Reiko’s nose was already tensing by the time the title sequence came up. And as the minutes passed and the vibrations built in amplitude, her breathing grew harsh, until right before the scene where the boy and E.T. touch fingers the spasms peaked in an audible brfaaa! “I, I can’t take any more of this! You tell me it’s like the end of the world, so I think okay maybe I’ll come along today and try to encourage you a bit. But I’m sorry. I’m with the others, I just can’t go for these movies.”
Satoru felt a burning inside, but no, he would force himself to be calm and convince Reiko in a collected manner. Though by now she had already exited to the lobby. Satoru gave chase, but by the time he got to the lobby she was nowhere in sight. Satoru flew out of the cinema and searched for Reiko. Before the dark-stained old woodframe cinema hall, supported by marble columns carved with gods of the Greek pantheon, flashed the neon sign of the Sun Nakano Plaza, reputedly the biggest karaoke palace in the Orient. And there on their much-touted Auroravision® playing full blast was the latest promotion video of that German-born major chart artist Karlheinz Stockhausen. As the glowing images cut and seguéd, Auroravision® pixels mingled with the ceaselessly downscattering dust in the damp air, creating a gigantic moiré effect. Shifting shapes organically along with the music, it looked to Satoru like some impossible monstrous lifeform. These thoughts suddenly plunged him into a nasty funk and he found himself rolling between the ever-surging waves of music in an ugly seasick state.
Through his hazy consciousness he thought he saw Reiko’s red coat swaying off into the distance down the busy high street from the cinema, but that too was drowned out by the glare of the Auroravision®. Satoru dragged his half-warmed-over corpse aimlessly down the high street. But all he found was a Pachinko parlour broadcasting Bartok by loudspeaker.
3
Satoru kept walking. By now he didn’t know where he was or where he was headed and he didn’t care. All he knew for sure was that he had to keep walking; walking was all that sustained him. The sky, heavily overcast since that morning, gradually weighed deeper into sleet. Chill drops of moisture plastered Satoru’s face, turning his saddened expression into a tearful mess. Satoru took the hint and broke down and cried, his shoulders heaving with each sob. When just then in the back of his mind, floating up like foxfires, wasn’t that the E.T. boy and the heroic figure of Harrison Ford and Robert Shaw as the daring sea captain who sent Jaws to its watery death, had they come to urge him on? Wholly embracing their aid, he felt reasserted in the great power of love, charged once again with courage and inspiration. To think he had the talent to feel these things after having plumbed such negativity, he even felt pleased with himself. He gave his heartfelt thanks to heaven. The sleet turned into rain in his breath, his tears into crystals of passion.
As he walked on in renewed spirits through the now driving sleet, straightening his slouch and humming snatches of Dreams Come True’s “Wish It Would Clear,” he began to think he’d like to let others in on this uplifted feeling of his. It was then he recalled a cozy little “loft”-style bar nearby his apartment, and he turned his feet in that direction.
There, on the oak door to the smaller-than-remembered entrance, read the tiny letters:
Bar Catharsis
A narrow wood-floored passage led in to where some ten men and women sat quietly at a counter. The instant Satoru set foot down inside, every man and woman in the place turned around and shot him a piercing cold stare. It was the “Wish It Would Clear” he was humming. Satoru gave a faux-delinquent click of the tongue, demi-cool, then took a seat at the counter looking as if nothing had happened. The premises, however, remained dead still as if doused in ice water. The tense atmosphere stifled the least movement, but what was that to him? He called to the bartender to order a drink, then tried to make conversation.
“Hey, aren’t you playing any music tonight?”
The bartender’s face went blank. His eyes bore down contemptuously as he quietly pronounced—”Sir! This is John Cage. Or didn’t you know!”
4
Back at his Macintosh, Satoru had been grueling away for more than five hours straight since morning. His answering machine had stopped functioning, it was so bloated with messages, but he refused to push the <Playback> button. Just more how’s-it-coming-along? calls about this last composition, he knew. Under standard contract for ten years, he was stuck just under the wire to make quota, struggling over the very last song for more than seven weeks now. And the notion that should he not meet his deadline they would dock his retirement annuities to be automatically paid out over the next twenty years had him more than a little concerned. The fact that these annuities were set at twenty years meant he would only live for another two decades more or less after his contract came term. While the government only recognised labour rights for that fixed period of time, advances in high-speed computers and widespread multimedia had shortened that active labour rights period by four-month units. After concluding the term of contract you were expected to live out the rest of your life on retirement annuities alone. Legally speaking, only a chosen handful were permitted to extend their contracts. Still, no one had the least speck of insecurity about the future. The government had seen fit to endow post-contract life with all the free time in the world. The government encouraged intellectual pastime pursuits; the official literature they distributed allowed for wholesale “individual pleasures”, which proved an intoxicating fantasy for most people. Satoru had been one of the few to raise loud objections to the system, but next to no one cared to listen. There’d been a time when he poured his energies into trying to organise a movement or union centred on music, but had always met with solitary disappointment. Rebounding, he’d even considered by engaging a lawyer to try to extend his contract, but no one in the legal profession showed any understanding of art as he saw it, not enough to join in the fight to protect artist rights, not even overseas.
5
Much irritated, by the time 6:00 rolled around Satoru noticed his trusted electronic musical-scoring pen had run out of ink. The pen was a mail-order product from Service & Scala plc, and it took three days to get the ink by post. But since you could buy the ink directly at their store, tired as he was, Satoru decided to set out. He’d bought this last supply with the ink memory pre-set for the composition deadline date, so he had something to complain about in person anyway.
Service & Scala plc was a famous old mail-order company of eighty years standing. Although theirs was a fame that carried not a nanogramme of weight. Which is to say that since the advent of computer networks snail-mail-order was a useless thing of the past.
Its location was a short way off from the city centre amidst block after rigid block of identical tower blocks, on the tenth floor of an estate tower. On the inner panel of the heavy iron door left open on the third floor was a thick bronze plate engraved with the letters S & S and a trademark crest of sorts—a flexed arm and fist. Satoru announced himself at the entrance, but there was no answer. He stepped inside and called out again, and immediately a person sprang up from behind the custom-built gleaming black counter.
“Dreadfully sorry. Do come in. What might you be looking for, sir?”
“I called earlier. The name is Izumo.”
“Ah yes, the ink for the electronic scoring-pen, handscript extra heavy wasn’t it? Please be so good as to wait, will you, Maestro?”
The moustachioed thin little grouse of a man’s response was certainly polite enough; Satoru had no complaint about that, so he waited.
“Ah yes yes yes, frightfully sorry about the wait. Here we are, sir. We do know our product, don’t we, Maestro! It is the rare composer who uses these, I must say, yes? Well now, then. And is the composing coming along?”
The loquacious delivery shot at him so arrow swift, Satoru was speechless.
“Hear now, not put upon, are we? My my, really, oh ho. Can’t be bothered? Not a moment to spare, what! Please, I’m at a loss, Maestro! Perhaps just one? So as to let fly with another of your hits, like always!”
“Li-like always . . .? I beg your pardon, have we even met before? And more to the point, this ink ran out midway, didn’t it? What kind of pen is this . . . ?”
“Let’s not be fussy. Like they say, the pen does not choose the man—or how was it? . . . Well anyway, ha ha ha.”
Satoru vacillated. Never had he encountered such a buffoon; he was at a loss for how to deal with him.
“Though you know, maestro. For the ink to run out so quickly you must really have been burning down to the line, yes? We thought as much.” The little man murmured under an insinuating grin. “We understand. Once the DNA committed something to memory, it just doesn’t want to go back. Life is hard these days, yes? Even myself, I might add, sometimes you get to feeling so depressed you want to die. I can just tell. This feeling of yours, it deserves the greatest attention.”
Enough! Satoru was truly fed up. When suddenly a huge pulsing wave surged through his veins, his brain, exploding into an irrepressible impulse that struck to like a whack of a machete in the yard next door.
The little man was whispering in his ear. “Actually, just between you and me, there is a little product just made for the Maestro. I do believe it may prove a boon to you, sir, yes?” So saying he placed a catalogue roughly the thickness of an encyclopedia on the countertop and proceeded to flip through the pages. “Hmm, the WPM-IR45, was it? What we all like to call the ‘Whipman©’.”
On the page to which he opened, there stood an expressionless yet somehow willful looking 40-ish man in a tight-fitting blue three-piece suit, posed hand on hip, the picture of determination. In his other hand, an attaché case. Satoru’s first impression was that he’d opened to the men’s wear page by mistake—only the price listing him differently. Those eyes, were they angry or not? Whatever, the model looked super confident.
The catch copy read Works wonders on small bodies, our Home Hit Master (suit not included). There was even a seal printed HIT ITEM.
“Wha-what is this?”
“Before you say anything, what say we have a look? Much faster than my explaining, I assure you.”
Whereupon the man gave a theatric clap of the hands, and with nary a hairbreath of a pause, a screen to the back flew open and out dashed the same man from the catalogue, completely naked—except for some reason
his left hand still held that stout black attaché case. Planting the case on the floor, the man let out a sharp—
Yo!
A statuesque Greek god of a man whose immaculately balanced form was trimmed of every waste ounce of flesh, his heroic skeletal frame supported an inverted triangle of bulging musculature and pumping veins. This invulnerable naked mass fairly gleamed in fighting readiness. The Whipman© turned to Satoru.
” So what you goggling at? The geese fly alone, the turtle turns to stone—get it? It’s like this turtle who sees these geese ‘n wants to fly too, but don’t know his own limits. That turtle’s you, chump! Hey, out with it. Say something! Oh and by the way, ever hear of the pleasure principle? Ain’t you in no hurry to speak, shrimp face? I can sees you don’t know nothin’, hmm? Alri-i-ight! Leave it to me to break you in, so how’s about let’s go grab some grub?”
” . . . er, yeah.” Satoru could find no explanation why he answered that way, but much to his own surprise he felt something akin to joy for even answering at all.
Presently the Whipman© turned his penetrating gaze on the little man and drew up close.
“Fork over those clothes.”
The very next instant, he’d stripped the little man perforce and with blinding hot speed had dressed himself. At that, the Whipman© grabbed the stunned Satoru and practically dragged him out into the street.
The now-denuded little man, his pale skinny body trembling and covering his crotch with the Whipman© manual that had dropped behind the counter, waved his other hand and shouted. “Maestro! Please bear in mind, the trial period is one week!”
His voice echoed from the tenth storey window down through the forest of tower blocks, rebounding time and again, then dissipating into the darkness whereabouts unknown.
6
“I ain’t slept in three days!” the Whipman© bellowed at Satoru, as they emerged from the bull-trademark Mansé chain restaurant after polishing off a beef sukiyaki dinner.
“You must be tired. Want to go home now?”
“It near here?”
“Huh?”
“I’m askin’ is it near here? Your place.”
“Near is near, but really now . . . you must be joking. After all what happened today, I don’t know what to make of you. For one thing, you’re so damn pushy. First you strip the store clerk of his clothes, then you have someone else foot the bill for dinner. Enough is enough, I won’t have you around.”
“Life comes with risks. I’m amazed you survived till today without knowing that. So let me tell you, the thirty-eight years you’ve lived up to now weren’t nothing. A total waste,” declared the Whipman©, spitting out a decisive “ha!” as he smashed a streetlamp to bits with a blow of his fist.
“Enough of your nonsense and your violence. I’ve got a life of my own, you know. If I don’t finish writing that song by the deadline, it’ll play havoc with the rest of my life. I don’t have the time to be fooling around with the likes of you. I’m heading home alone. You can do what you what you damn well please.”
The Whipman grabbed Satoru’s arm with tremendous force.
“You still don’t get it, do you? Well look here. I’ll size up your life right here and now.”
The Whipman© opened the attaché case with his left hand and pulled out a calculator keyboard the likes of which he’d never seen, instantly stroking the keys with the fingers of his right hand. No sooner had he input whatever-it-was than the wide-screen screen display digitised out
<SATORU IZUMO, AGE 38, MALE, COMPOSER>
“I just input your life, chump. This baby’ll crunch out the sum total of your existence up to now. If you wants to know, just hit ENTER and give a listen to the voice on the speaker.”
Satoru gave a nervous nod and pressed the ENTER key with fear and trepidation.
KA-A. KA-A.
Once again, he pressed.
KA-A. KA-A.
“What’s that? Is the thing broken?”
“You wish.” The Whipman© declared solemnly. “That is your life.”
7
Satoru turned the front door key and the Whipman© went in. Showing him to the bedroom, he returned to the living room, lit up a smoke and stretched out on the sofa. Turning to Michael Jackson on the wall, he began to relate all the misfortunes that befell this one day, when suddenly a loud growl interrupted.
“Oy! Hey! What’s going on here!” shouted the Whipman© as he invaded the living room and proceeded to move Michael Jackson’s picture. “Stop it! Anything but that! In the end, you’re no different than the rest of them, are you? You muscle your way in here to make me miserable. Now just stop it!” Satoru leapt to his feet and launched himself at the Whipman©’s legs.
“This here’s not quite straight.”
“The picture is supposed to be level with the floor. What’s more, hung up a little higher might bring a ertain harmony to the room.” Satoru was so thrown off, a vague reparteé was all he could manage as he plunked down on the floor.
“Oy! Satoru! Wanna drink a Post-Water?”
“Mm, er.”
“The fridge in here?”
“Please don’t go rummaging around in there!”
But the Whipman© just ignored him, flinging open the built-in refrigerator to scarf up a bottle and bottom up the whole thing in one go.
“Ni-ice ‘n cold. Mighty thirsty after that sukiyaki, mighty thirsty. Hey, what’s with the long face? Oh, I get it. S-sorry, you wanted some too, eh?”
“Not funny. This is not your house. This is my place. And I’m telling you, don’t go poking in my things without asking!” Satoru pronounced from the floor.
“Okay, then, think I’ll have me a guided tour, mm?” said the Whipman© as he forced his way into the studio.
Satoru’s workroom was a complex of wiring connections from various instruments to the computer and mixing console, the Macintosh table littered with jottings of ideas and misnoted scores, pens and pencils, a veritible stew of composition.
“Hands off the instruments and computer—absolutely! Promise me only that, whatever you do. You may be some kind of expert in brute force and that dorky calculator, but music’s my territory. That room is a sanctuary to musical creation!”
Taken aback by the head-on gravity of Satoru’s harranging onslaught, for once the Whipman© backed down into a chair by the piano and spoke slowly in a strangely calm and collected tone. “Tell me, Satoru. Do you really think creation can come from an environment such as this? First of all, how about let’s clean up this table. Granted creation means plunging oneself into chaos, but unless you maintain a constant distance from that chaos you’ll never create anything. To place oneself in an environment is to be at all times amidst the cool ambient air of the forest. The low sweep of the underbrush, the ageless giant trees that inkwash over the misted outlines of the hills, the bare discoloured branches. The sounds dropped from countless cells, the sweet springwaters that well up without cease. That is an environment. So let me just give you one important piece of advice. A warning. Here is where it all begins. Stay here, and it all sparks forth. Just listen, drink in the quietude.”
So saying, he realigned himself to the piano and gently tapped at the keys. What at first sounded like an aimless succession of randomly fingered notes gradually attained individual clarity, definition, and almost as if the piano began to breath rhythmically, now short now prolonged, taking on an ineffable life of its own. The empty spaces between notes, as each new vibration arose only to die away, traced away in arcs or again played out like strings of rosary beads. An azure realm such as no one had ever heard. He could listen on and on forever. Not even realising that what he was hearing was Beethoven’s Moonlight Sonata.
8
By the time the Whipman© woke up, the clock was pointing to past 11:00 in the morning. He went out into the living room, but Satoru was not around, so he tried the door to the studio.
Judging from Satoru’s expression, the painful agonising of up to yesterday had given way to a peaceful yet serious intensity. Satoru, headphones on and glued to the Macintosh, didn’t notice him enter at first. Until he turned to finger a keyboard by the door and instead touched upon the Whipman©’s gridlike stomach muscles, then let out a scream.
“Hard at it, eh? Alri-i-ight. So why don’t I rustle up some lunch!” Poked in the ribs and doubled over, Satoru observed out of the corner of his eye as the Whipman© exited to the living room.
From that day forward, the Whipman© cooked mushrooms. Why always mushrooms? Satoru asked, but all he would say was, “Don’t try to understand in words.” Thus, over and over again as if possessed, they were eating mushrooms, Satoru for his composing, the Whipman© to keep up his body-building.
Then came noon on the fourth day. After finishing lunch, the Whipman© addressed him. “So tell me, Satoru what’re you creatin’ for?”
“You don’t know? After three days and nights together? And me, without a moment’s sleep? Why do I whip myself to compose music like this? Deadlines and retirement funds have nothing to do with it. This is for art’s sake! That much you should be able to appreciate. At least I think I deserve to get that much recognition, from the likes of you.”
“You ain’t even seen a whipping yet. And your ‘art’, why it’s just KA-A, KA-A.”
“More of your wiseacre philosophizing! I really just don’t know what to make of you.”
“But y’know, Satoru, let’s say we got three guys here, you included. And we put down ¥50,000 right in front of you. Well, what’d you do?”
“Is this some kind of psychological test?”
“Don’t think too hard. So, what’d you do?”
“Well, let’s see. If it we’re up to me, I’d have us all play scissors-paper-stone, winner take all. A fair-and-square judgment, everyone equal and democratic. No complaints that way.”
“What if you took ¥10,000 for yourself, and split the rest between the other two guys ¥20,000 each? How’s about that?”
“Well, I uh—”
“Ever hear of Gandhi? Not gaijin—Gandhi. Well he had this to say, ‘All true art must aid the spirit if we are to realise the inner self.’ Get it?”
“What’s that got to do with sharing ¥50,000?”
“Before you go questioning, you need time to absorb things. Speaking of which, such good weather, why don’t I step out for a change?” And with that, the Whipman© grabbed up his attaché case in his left hand and flung open the front door with tremendous flourish.
9
Where the Whipman© was headed, Satoru had no idea, but after three days the city outside seemed bracing. Led on by the Whipman©, he had to walk at a faster clip than he was accustomed to, and perhaps for that reason he was not himself, not the same person he was up until today. He was infused with some fresh new sensibility. Was it the surroundings, had they changed? Or was something changing inside himself? All Satoru could tell was that the gears of his emotional tuning had shifted to a different speed.
The city was the same as ever—and yet, the Bartok blaring from the pachinko parlour was no longer so vexing. The sight of Brian Eno’s face projected from the huge Auroravision® may have depressed him just a tad, but he felt no antipathy. More than that, however, Satoru was surprised how much more animated everyone was than he remembered. Up until now, Satoru had preserved himself by shutting it all out, not a moment to spare for city-gazing. Now what met Satoru’s eyes was completely different to yesterday’s world. The proliferating ranks of city dwellers all bore the same purpose, each walking in a completely different direction. Gone were the ever-rewoven shadowings, those intricate patterns that once intermeshed like a clinging growth of ferns between the soaring melancholic forest of organic buildings. Though this made Satoru not a little sad. And he reflected on his own state of affairs.
The two of them walked on, entering a long tunnel that linked north to south. Expelled from the south exit through a crush of pedestrians into a shopping arcade, they were passing by a greengrocer’s when the kindly old shop-owner was heard to whistle a pop anthem by Brian Eno.
“Yas’m, thanks ma’am. Need the change or e-no?”
Satoru sneered at the poor grocer casting pearls before housewives. And in that very instant—
“Imbecile!”
—barked the Whipman©, swatting Satoru to the ground with repeated slaps of his steel hands. Satoru’s field of vision froze like a snapshot, the passers-by and grocer reduced to a motionless glaze. It was all he could do to visualise some physical sense of what was what. It all transpired in maybe 1/10,000th of a second, but to Satoru it felt like an eternity.
Soon enough, however, the Whipman©’s face underwent a visible morphing from unbridled anger back to his normal composure, and he broke into a smile.
“Don’ mind, don’ mind.”
While Satoru was still reeling with hardly a second to catch his breath, the Whipman© turned and faced off into the distance as if magnetised.
“Oy! Satoru! Hear that?”
The Whipman© began to vibrate with alarming speed, as if his sensitivity voltage were turned up to the max. So strong were the Whipman©’s oscillations that his very silhouette blurred beyond recognition.
Whereupon, Satoru noticed, along came Reiko on her bicycle, ringing her bell so as to part the tides of humanity before she ran into anyone.
“Satoru. That sound. You gotta capture that sound. You can hear it, can’t you?”
This time it was the Whipman© who pleaded, crouching down to bolster Satoru upright. Up close, Satoru’s ears buzzed with the Whipman©’s vibrations.
“Quick! Get with it Satoru!”
“Sound? You mean the bell?”
The next thing Satoru knew, the Whipman© had leapt toward Reiko, or rather to the bell with ferocious speed. And suddenly, while Satoru looked on in momentary shock, a car cut across the road and rammed the Whipman© straight in the side of his torso with a grinding crash. Satoru ran toward the braking car.
Face down under the wheels, the Whipman© propped himself up on his arms and looked at Satoru. From his broken forehead pumped pulses of blood. Satoru crouched down on the spot, not knowing what to do, and wiped the Whipman©’s forehead with both hands. The blood ran from between his loving fingers and spilled to the ground, spattering away like red mercury.
“Satoru. No one else can intercede in a man’s death. This is the last truth left to humanity. Yes, but what about birth . . .?”
These were the Whipman©’s last words. Lying open beside the Whipman© was the attaché case, disgorged of its broken calculator. Inside the twisted calculator were two rectangular batteries, nothing more.
10
“This is nothing to be understood with the head alone. No, this is different: an extremely deep instinctual knowledge wells up suddenly from the pit of one’s gut. To see the earth as a pale blue planet floating far off in the void and think it’s revolving around the sun, while nothing I could comprehend intellectually, I could just tell there was a purpose to the flow and energy of the universe and time and space. Right then and there, I realised there exists an intuitive understanding that transcended all previous experience and reason. This universe cannot be explained merely as a random ping-ponging of haphazard molecular masses; there has to be something to it.”
—Edgar Mitchell, Earth: Our Mother Planet
11
The front door bell rang, and Satoru went to answer it.
“Service & Scala plc here. Were you satisfied with the trial period, Maestro? Oh, my, really now, don’t look so surprised. Indeed, well, yes—seeing as you, anyway, we took the liberty of bringing the contract with us today, yes?”
“Um, er.”
“Um, er, indeed. Mustn’t forget now, oh ho? So here it is, here he is,” said the little man, pointing to the giant figure outside the door.