KAKASHI
ミニマルやダブといったアプローチをベースにしながらも、俳句のような、簡素で完結した語り口がアルバムを貫いている。
The album has its foundation in a minimal, dub-style approach, yet a central thread of stories told like haiku poems with simple conclusions runs throughout.
2017年
The Quietus|9月28日、12月12日 Reissues Etc Of The Year 2017に選出
The Vinyl Factory|9月28日
Resident Advisor|11月11日
2018年
Spectrum Culture|1月18日
Record Collector|2月号
Pop News|2月7日
Crack|2月28日
当然僕も空気を吸って生きてるってこと。回りの空気が悪いから排除しようなんてこと出来ないよね。だからもっと様々な空気に触れてみよう、と当時思っていました。 精神にとってよくないと思われる空気もおもい切り吸っていました。
92年、このアルバムは再発されました。そのライナーノーツで鈴木惣一郎君が「ここから今日の清水ヤスアキが始まった」といっていますが、ホントそうだね。
例えば、一杯の日本茶を飲む。自然の息吹が体中を駆け巡り、ゆったりとした安堵感が自分に訪れる。そんなささいなこと。それがハピネス。ささいであるが故に大切。例えば、縁側に干されたふとん。太陽の愛を一杯に受けとめたそれは、至上の暖かさとぬくもりを持つ。その上に寝ころがった時のハピネス。あたりまえであることの大切さ~そして、案山子。田畑に一人立つ彼を電車から見かけた時、何とも知れん気持ちになる。彼のそのロンリー・ロンリネスに、ジャパニーズわびさびに心はぎゅっと締めつけられる。ほのぼのとしていて悲しい。
つまりは、「そういうことなのだ」。
靖晃さんの『案山子』はつまり、そういうことなのだ。日本茶を飲んだ安堵感。縁側のふとんのぬくもり。案山子のりんとしたきびしさ。更には、過去や未来への深い郷愁。
すべてが音楽の中にある。
僕は、ずっと日本が持つ素敵なエキゾティシズムを音楽に求め続けてきたけれど、そのニュアンスが、文脈が、ムードが『案山子』の中に全部あるんです。これって、大変なことなんです。 「わおっ」って感じ。
このアルバムが発売された一九八二年という時代はテクノ、ニュー・ウェイヴ全盛。みんな、必死でトンがっていました。なのに、この頃の靖晃さんは一人、ほのぼのとリラックスしていた。ウィズ・ストリングスものの『北京の秋』、ピエール・バルーの『ル・ポレン』なんて美しいアルバムを作っちゃったりして、力がすーっと抜けた仕事を数多く残している。
そして『案山子』。
サウンド的には当時、人気のミニマルやダブといったヒップなアプローチがベースとなっているけど、消化率も高く、更には全然、気負ってない。そうした構造に溺れることなき、俳句のような簡素で完結された語り口がアルバムを貫いている。語り口は、ある時はサックス。ある時はクラリネット。そして、ある時は歌だ。故生田朗さんとの美しいコラボレーションによって、靖晃さんのパーソナル・パワーは全開に爆発している。
生意気に書かせてもらえば、ここから、今日のシミズヤスアキが始まったのではないか。つまりはデビュー今年で10周年。もう、これがデビュー・アルバムだといってしまいたい。
― 祝再生『案山子』 ―
(鈴木惣一朗)
In the liner notes for the 1992 reissue of this album Soichiro Suzuki wrote, “the Yasuaki Shimizu we know today starts here.” (Very true.)
プロデューサー:清水 靖晃、生田 朗
作曲:清水 靖晃、田中 穂積(8)
清水靖晃:ヴォーカル、サキソフォン(ソプラノ、アルト、テナー、バリトン)、フルート、クラリネット、バスクラリネット、ドラムス、パーカッション、チャランゴ、マレット、トランペット、ピアノ、エレクトロニクス、テープ、ノイズ&トイ
生田 朗:ベース(6)、ギター(7)
山木 秀夫: トラップドラム、グランカッサ、チャンチキ、パーカッション(1、2、8)
渡辺 モリオ:ベース(1、2、7、8)、エンガワ [バラフォン]、風鈴 (8)
土方 隆行:ギター(1)
笹路 正徳:マリンバ(2)
兼崎 順一:トランペット(4、2、8)
ジョニー・バレット:フレンチマン、アイリッシュマン(1)
山口 弘治:ホルン(1)
折笠 満:セロ(1)
矢島 富雄:セロ(2)
レコーディング/ミキシング:小野 誠彦
レコーディング/ミキシングスタジオ:コロムビア(東京)
Produced by Yasuaki Shimizu, Aki Ikuta
Composed by Yasuaki Shimizu, Hozumi Tanaka (8)
Yasuaki Shimizu: vocals, soprano, alto, tenor, baritone saxophone, clarinet, bass clarinet, flute, trumpet, piano, mallets, drums, percussion, charango, electronics, tapes, toys, noises
Aki Ikuta: bass (6), guitar (7)
Hideo Yamaki: trap drums, bass drum, chanchiki, percussion (1, 2, 8)
Morio Watanabe: bass (1, 2, 7, 8), engawa: balafon, wind bells (8)
Takayuki Hijikata: guitar (1)
Masanori Sasaji: marimba (2)
Dompei Kanezaki: trumpet (4, 2, 8)
Johnny Barrett: Frenchman, Irishman (1)
Koji Yamaguchi: French horn (1)
Mitsuru Orikasa: cello (1)
Tomio Yajima: cello (2)
Recorded/mixed by Seigen Ono at Nippon Columbia (Tokyo)