ぼくはそれほど集中的に音楽を聴くほうじゃないのですが、モリコーネは時代が変わるにつれ、つねに向こうからやって来る。それで聴いていたようなところがありますね。なかでも圧倒的にマカロニ・ウェスタン。ある意味でモリコーネの象徴と言えるんじゃないでしょうか。ニーノ・ロータとは違う意味で、まじめじゃないというか、ユーモアがある。いわばモリコーネは直球型で、ある時代にはダサイと言われていた訳ですが。
モリコーネが音楽を担当した映画は、若い頃からかなり見ています。ぼくはハリウッドに行ってからのロマンティック路線よりも、マカロニ時代のユーモア路線みたいなところが好きなんです。それとアレンジものですね。まじめにやりながら、それがねじれている感じがおもしろい。ロータにもそういう部分があるんですが、モリコーネとはちょっと違う。まるで何も考えていないようでいて、シンンボリックなものを統合してしまうようなところがおもしろいんです。
いままでモリコーネのクラシック作品を聴いたことはありましたが、演奏したのは今回のトライエムの『クラシカル作品集』が初めてでした。アルバム自体のアプローチがいいなと思うんですよ。ぼくは無伴奏コントラバスの曲(「コントラバスのための練習曲」)をやっているんですが、モリコーネがアカデミックな部分を砦に守っているようなところを逆にちょっと腰が抜けたような感じで演奏することによって、モリコーネが持っているマカロニ的な部分とアカデミックな部分との間を往還するようなことが出来るんじゃないかなと。モリコーネの現代曲に対するマカロニ的接近というか(笑)。即興よりも、逆に固い枠があるところで、どれだけ崩していけるかがおもしろいと思うんです。
それと、モリコーネの現代曲というシンボリックなニュアンスがおもしろいと思うんです。テクニック的な部分がどうこうっていうのじゃなく、現代曲では、その人物のすべてが出ている。モリコーネについては、マカロニもすべて含めて。だから、現代曲にもどこか素っ頓狂なところがあって、そういうところがさらにおもしろいと思うんです。
時代の中で、無意識にモリコーネに影響されてきている部分もあると思いますので、ぜひモリコーネに発見してもらいたいアルバムでもありますね。(談)